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〜YouTubeやSNSに出る“あの広告”、なぜ放置されているのか?〜
最近、『Panasonicと共同開発』『AIチップ搭載』など、誇張された魅力的なフレーズが並ぶ商品広告をよく見かけませんか?
広告をクリックしてみると、ヤマダ電機やビックカメラのロゴや店舗の写真を無断で使用している場合が多々ある…。
でも、いざ問い合わせてみると「そのような商品は取り扱っていない」「詐欺広告が増えている」と案内されることが多い——。
SNSやYouTubeでも頻出するこれらの“広告らしきもの”。
詐欺の疑いが強いのに、なぜ出回り続けているのでしょうか?
「なぜ効果的に取り締まられないのか」「被害に遭わないために何を見抜くべきか」
今回はその“見えない盲点”とともに、安心して判断できる知識を深掘りします。
企業名を勝手に使った広告が横行
こうした広告の多くは、日本の有名企業を“勝手に使って”信頼感を演出しています。
商品自体は怪しげなノーブランドにもかかわらず、ビックカメラやヤマダ電機などのロゴや店舗画像を無断で使用。
『Panasonicと共同開発』『日本の技術が生んだ最先端』など、誇張された表現を使い、見た目には信頼できそうな雰囲気を作り上げています。
しかし、いざ問い合わせてみると当の企業は関係がないと回答するケースが多い。
ここで注意したいのは、これが“個人の騙し”ではなく、“仕組まれた広告モデル”の一環であるということ。
企業名の無断使用は商標法や不正競争防止法に違反する可能性が高い。
国外の発信元は対応が今の時点では難しいのですが、2025年12月から海外事業者への規制が強化される予定です。
SNS・YouTubeが広告を“選んでない”理由
では、なぜYouTubeやInstagram、TikTokなどでこうした広告が頻繁に流れているのでしょうか?
実は、こうしたプラットフォームでは、広告掲載の仕組みが“自動化”されているためです。
広告主が『広告を出したい』と申請し、支払えばアルゴリズムが配信先を選んで表示してくれます。
そして問題なのが「中身の詳細なチェックが不十分な場合が多い」という点。
もちろん違法な広告は禁止されていますが、機械的・人的審査が追い付かず、ユーザーの通報で初めてチェックが行われることも。
そのため、詐欺まがいの広告が通過してしまうケースが後を絶ちません。
つまり、広告を出しているからといって「YouTubeが認めた」わけではなく、むしろ「YouTubeも詐欺広告を見抜けていない場合がある」と考えた方が現実的です。
「明らかな詐欺なのに」なぜ取り締まれないのか
「ここまで悪質なら法律で取り締まってほしい」
——そう思うのは当然ですが、実はここにも大きな壁があります。
現在、日本には「景品表示法」や「特定商取引法」といった消費者保護の法律がありますが、主に日本国内の事業者を対象としています。
(国外事業者への規制は2025年12月から強化される予定です。)
今回のように、広告の発信元が中国や香港など国外企業である場合、摘発には国際的な手続きや時間が必要で、対応が難しいケースが多いのです。
また、今はプラットフォーム側は『場を提供しているだけ』と主張していますが、今後はデジタルプラットフォーム透明化法により責任が問われる場合が出てくる可能性があります。
このように法整備の遅れとネット広告のスピード感のズレが、完全な防止を難しくしているのです。
私たちにできる3つの対策
では、こうした詐欺広告に引っかからないために、私たちはどう対処すればいいのでしょうか?
【1】会社名や住所を必ずチェック
→ 住所が『中国 広東省』など海外で、事業者情報が不明確な場合は要注意。
日本語でも、住所が曖昧だったり、会社名が実在しない、または特商法に基づく連絡先が記載されていない場合は警戒すべきです。
【2】公式サイトに飛ばず“販売ページだけ”のリンクに注意
→ 企業名を名乗っていても、クリック先が『.xyz』『.cn』など見慣れないドメインで、公式サイトと異なる場合は要警戒。
販売ページだけで、運営元の公式サイトや信頼できる連絡先情報が見つからない場合は要注意です。
【3】「口コミが多い=信頼できる」ではない
→ 最近では“フェイクレビュー”も横行。
評価数が多くても、文章が不自然、投稿者が匿名、またはレビュー投稿日時が集中している場合は疑った方が安全です。
まとめ
~ 情報の“質”を疑う目を ~
『AI搭載』『共同開発』など、誇張された表現が簡単に使われる時代。
特にネット広告の世界では、ロゴや店舗写真を使った視覚的な演出が信頼感を生むことも多く、かえって落とし穴になります。
重要なのは、「広告だから安心」ではなく「広告だから疑ってみる」という視点。
そして、どんなに有名企業の名前が出ていても、「公式サイトに載っているか?」を確かめる一手間が、最も確実な防衛策です。
法律の整備やSNS側の対応は進んでいますが、完全な防止にはまだ時間がかかります。
だからこそ、まずは私たち自身が「知っておく」ことが、最も有効な予防策となるのです。