「只見線11年ぶり全線再開」。これは福島県と新潟県の方のみならず、日本全体にとって嬉しいニュースだと思います。
しかし、只見線のことをあまりよく知らない人にとっては『只見線?それどこにあるんだっけ?』と首を傾げてしまうニュースなのかもしれません。
只見線は福島県と新潟県を結ぶJRの鉄道線路で、豪雨災害の影響で長い間一部不通のままになっていました。
それが今回、沢山の人々の尽力により11年かけてやっと全線開通の運びとなったのです。
地方のローカル線が、なぜ廃線に追い込まれず11年もかけて復活したのか?
なぜ話題になるのか?
その理由は、地元の住民の方々をはじめ只見線を愛する多くの人々の尽力と、海外からも賞賛されるほど美しい只見線沿線の風景にあったのです。
知る人ぞ知る只見線の復活劇とその魅力について、簡単にまとめてみました。
只見線とは
新潟県魚沼市の小出駅から福島県会津若松市の会津若松駅を結ぶ全長約135kmのJRの路線。
・36駅
・最高速度65km
只見線の歴史
1926年(大正15年)会津線として会津若松と会津坂下間が開業。
1928年(昭和3年)会津坂下から会津柳津まで延伸
1941年(昭和16年)会津柳津から会津宮下まで延伸
1942年(昭和17年)只見線として小出と大白川間が開業
1956年(昭和31年)会津宮下から会津川口まで延伸
1963年(昭和38年)会津川口から只見まで延伸
1971年(昭和46年)大白川から只見まで延伸し、只見線が全線開通しました。
大正時代から45年かけて少しずつ線路を伸ばしていって、最終的に今の只見線が出来上がったってことですね。
只見線を襲った豪雨
2011年(平成23年)7月30日に、新潟県と福島県を豪雨が襲いました。
東日本大震災が起こった4ヶ月後です。
この豪雨で只見川の橋が3本も倒壊・流出してしまうという甚大な被害が出て、只見線も路盤が流出、会津坂下と小出間つまり只見線の大部分が不通となってしまいました。
橋が3本流されるって、どれだけ凄い雨だったんでしょうか…。
復旧に向けて
JR東日本の試算によると、復旧費用は81億円とあまりに大きい金額。
JR東日本はこのうち54億円の負担を福島県に求めてきました。
福島県と沿線自治体は協議を重ね、2016年ついに負担することで合意しました。
復旧後の運営については列車の運行はJRが行い、鉄道施設の管理は県や沿線市町村が行うということで、年間の費用負担はJR東日本が7,100万円、県や沿線自治体の負担は2億1,000万円だとのことです。
JR東日本の負担に比べて、県と自治体の負担が大き過ぎる気がしますが…。
過疎化が進む地方。誰もが自家用車を持つ時代。
乗客の数がこれから増えていくことは考えにくいのですが、大きな負担を背負って県と自治体は大丈夫なのでしょうか?
JR北海道などではローカル線の廃線の流れが進んでいます。
日本に昔からある地方の鉄道というのは、そのまま地方の歴史であり文化でもあると思うので、廃線となってしまうのはその地方の人間ではなくても何とも寂しい気持ちになってしまいます。
しかし時代の変化や流れには逆らえません。
そんな中、福島県と沿線自治体は、赤字経営覚悟で、観光のシンボルとして只見線の存続を望み、大きな負担を背負って全線鉄路での復旧という道を選んだということなのです。
絶景の秘境ローカル線
もともと只見線は大自然の絶景の中を走る姿が好まれ、遠方から多くの写真愛好家が集まるところです。
雄大な山々、澄み切った清流、田園風景など、古き良き日本の景色がそのまま残っているので、観光客も多く訪れます。
特に紅葉に包まれる10月中旬から11月中旬にかけては多くの観光客で賑わい、臨時列車が運行されることもあるそうです。
地元の写真家の地道なPRが実を結び、海外からの観光需要も上昇していて、香港のメディアでは「世界一ロマンチックな鉄道」として取り上げられたとか。
また今年2022年、新潟のアマチュアカメラマンの方が撮影した只見線をモチーフにした写真が、国際写真コンテスト「自然」の分野で最優秀賞に選ばれたそうです。
コロナ禍の現在、海外からの観光客は下火のままですが、収束後は沢山の乗客で賑わってほしいですね。
私もいつか必ず只見線列車旅行を実現させたいと思っています。
まとめ
只見線の復活は、福島県や沿線自治体、そして地元の一般の方々が一丸となって只見線継続のために力を尽くした結果、実を結んだことでした。
そして只見線が走る区間というのは、福島と新潟の、昔からほとんど変わらず残っている絶景の日本の風景が見られるということで、国内のみならず海外からも注目されているのです。
日本の美しさを満喫できるこの只見線は、日本全体で守るべきなのではと個人的には思います。
鉄道は、道路と車が発達する前の主要交通手段でした。
時の流れとともに世の中は大きく変わり、人々は都会で暮らし始め、地方では人口が減り、誰もが自家用車を持つようになったので鉄道を利用する乗客は減る一方になりました。
確かに列車は自動車に比べてきめ細かな移動ができないし、乗車時間も決められているし、現代の忙しい生活にそぐわない面はあります。
しかし生活の道具としては廃れていっても、情緒ある鉄道列車は旅や観光などにおいてはその長所を十分発揮できると思うし、ずっとなくならないでほしいです。
鉄道の旅はまず安心感がありますよね。
お酒を飲んでもいいし、ゆっくり景色を眺められます。
車だと飲酒はもちろんできないし、運転手はよそ見もできません。
忙しい現代人は、たまには日頃の憂さを忘れて、鉄道の旅でのんびりと命の洗濯をしたらどうでしょうか。
只見線に乗車して車窓から日本の原風景を眺めていたら、心洗われ寿命ものびるのではないかという気がします。
コロナ禍の中、まだのんびり旅行を楽しむというわけにはなかなかいかないのですが、早くコロナが収束して日本がまた元気になること、そして今回、全線復活した只見線のもとに多くの観光客が集まることを願っています。