2022年10月末、鳥取県がアンディ・ウォーホルのアート作品「ブリロの箱」5点を約3億円で購入したことが話題になっています。
これは何?ただの箱に見えるけど、まさかこれが3億円なの?
と思った方。
私もその一人なんですが、このブリロの箱って一体何なのか、なぜ鳥取県が3億円もかけてこの箱、いえ、美術作品を購入したのか、調べてみました。
ブリロの箱とは?
ブリロの箱とは、ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルによって1964年に制作されたアート作品です。
当時市販されていたブリロの紙パッケージの精密な模造品なのですが、こちらのアート作品の方は木材で作られており、スクリーン印刷とインクを用いて彩色されています。
写真では紙の箱のように見えますが、木の箱なんですね。
サイズは43.2×43.2×35.6cm。
サイズ的には女性でも一人で抱えられるくらいの大きさですね。
そしてそもそも「ブリロ」って何なのかっていうと、ブリロとはアメリカの食器洗いパッドであり、1917年以降生産販売され全米の家庭で親しまれているものです。
要はキッチン雑貨ですね。
このタワシみたいなの、見たことあるなあと思ったら、日本でも販売されてました。
そういえば私も昔、使ったことあります。
洗剤を含んだ使い捨てのタワシなので、ガスコンロなどを掃除する時など便利です。
アメリカから来たものだとは知りませんでした。
1960年代、この市販されているブリロの箱、つまりアメリカの国民にとっては見慣れている日用品の箱をそのままコピーして作ったものが、アンディ・ウォーホルの「ブリロの箱」というわけです。
あのう、そんなものがアートになって億の値がつくんですか…?と、思ってしまうんですが、アンディ・ウォーホルは世界的に有名なポップアートの巨匠。
没後35年経った今でも、その人気と作品の価値はむしろ上がっているのです。
鳥取県がアンディ・ウォーホルの作品を購入した理由
鳥取県がアンディ・ウォーホルの作品「ブリロの箱」を購入したのは、2025年春に倉吉市に新設する県立美術館の集客の目玉になると考えたからのようです。
「都市部の美術館にないポップアートの名品を展示できれば、鳥取の存在感をアピールできる」と、県は説明しています。
しかし鳥取県内では、3億円という金額が高すぎるのではないかと懸念する声や、なぜ1点ではなく5点必要なのかといった疑問の声、日本人にはなじみがないという批判の声が噴出したようで、県は11月までに県内各地で住民説明会を開くことを決定したようです。
確かに、ポップアートの名品とはいえ、見た目は3億の値がつくとはとても思えないものだし、はっきり言ってどう鑑賞したらいいのかわかりません。
ただ、普通の芸術的な絵画や彫刻などの作品とは違ってアンディ・ウォーホルの作品を鑑賞する時は、アンディ・ウォーホルがどのような人物だったか、その作品が作られた時代背景とともに知る必要がありそうです。
アンディ・ウォーホルとは
1928年生まれ。
1987年、58歳でこの世を去る。
1960年代、経済発展目覚ましいアメリカにおいてアートシーンを牽引する人物であり、沢山の作品を世に残しました。
その作品は今現在もずっと安定して高値で取引されています。
1963年の作品『シルバー・カー・クラッシュ』は2013年、ニューヨークのサザビーズで1億500万ドル(105億円)で落札されました。
アンディ・ウォーホルといえば、マリリンモンローの肖像画も代表作の一つです。。
1964年にシルクスクリーンで制作された『ショト・セージ・ブルー・マリリン』は、2022年5月9日に開催されたオークションで1億9500万ドル(約254億円)で落札され、アメリカ人アーティストとしては史上最高額の作品となりました。
また、最も有名なアンディ・ウォーホルの作品と言われているのは「32のキャンベルスープの缶」です。
実は私は10代の頃初めてアンディ・ウォーホルの作品を見たのですが、「?」としか思いませんでした。
好きでも嫌いでも、快でも不快でもなく、『なぜこの作品がすごいと言われるんだろう?』という疑問しかなかったです。
アンディ・ウォーホルが「ポップアートの巨匠」と呼ばれるのは、作品を発表した時代に大きく関係しているようです。
1960年代に制作されたウォーホルの作品は、それまでの芸術や絵画とは全く異なっていました。
大衆的で低俗と見なされていたものを主題にして美術作品として発表した、言わば美術の「おきて破り」だったのです。
時代が大量生産、消費社会に移り変わる頃で、目に見えない人間の欲望こそが社会を動かしているものだというのがウォーホルの考えで、それを初めて見える形で作品化したのがウォーホルでした。
同時にウォーホルが作り出す作品の数々は、「芸術と、芸術でないものの違いとは?」という哲学的な問題提起をし、それまで“鑑賞”の対象であった芸術が“思考”の対象となる大きなきっかけとなったというわけです。
ウォーホルが現代アートの旗手、と言われるゆえんですね。
生まれた時から大量生産、消費社会の中で無意識にポップアートに囲まれて生きてきた私たちは、ウォーホルの作品を見ても特に何も感じませんが、当時その作品は先鋭的であっただろうし、美術史の流れにおいても革新的だったのでしょう。
そう考えると鳥取県がアンディ・ウォーホルの作品を購入したのも、英断のように思えてきます。
ネットの声
世の中の人は今回のニュースをどう受け止めているのでしょうか?
ネットの声を拾ってみました。
・全国レベルの話題になることでもはや3億円に迫るPR効果が得られる気がする。
・ウォーホルは好きだがこの作品は知らなかった。
・この手の作品は見た目と作品の価値にギャップがあるから、相当難しい展示環境になると思う。
・新たにオープンする美術館の認知度向上やプレゼンスの確立のために目玉となる作品を用意するのは自然なことだと感じます。
・もっと身近なところでの暮らしを豊かにすることに使ってほしいという意見が出て当然だと思います。
・一過性の集客力はあるかも知れないが継続的な集客力は期待はできない
・当面は集客にもなり、よほどの事がない限り価値は下がらないし、将来的に値上がりする可能性もあるのでそのときは展示品の入替として売却すれば利益にもなる。
まとめ
ブリロの箱はただの箱などではなく、美術史を塗り替えたと言っても過言ではない超有名アーティストの貴重なアート作品でした。
大量消費社会の中で生まれ育った私たちはそれ以前の世の中を知らないので、アンディ・ウォーホルの作品が投げかけるメッセージを受け取るのは難しいのですが、彼が時代の寵児であったこと、そしてその作品が今でも特別視され破格の値がつくことは間違いない事実です。
鳥取県が3億円かけて購入したブリロの箱、一度見てみたくなりました。