アイキャッチ画像 パンチくん

 

市川市動植物園で暮らすニホンザルのパンチくん。

 

2026年2月に拡散された動画をきっかけに、「いじめではないか?」という声が広がりました。

 

まだ小さな赤ちゃん猿のはずのパンチくんが、なぜ大きな猿から攻撃されるのでしょうか?

パンチくんがいじめられる理由は?

パンチくんは2025年7月26日生まれのオス。

 

生後約7か月の赤ちゃん猿です。

 

母親猿が初産で、猛暑の影響もあり育児放棄したため、人工飼育で育てられました。

 

その後、2026年1月19日から約30頭が暮らすサル山の群れに合流。

 

現在は“猿社会のルール”を学んでいる最中です。

 

人工飼育で育った個体は、母ザルから社会性を学ぶ機会が限られます。

 

そのため、群れに入った後に他個体との距離感や順位関係を体験的に覚えていく必要があります。

 

今回の出来事も、その過程のひとつと考えられています。

拡散された攻撃動画の内容

問題視された動画は2026年2月19日に撮影されたものです。

 

 

パンチくんが他の子ザルに近づいたところ、その子ザルが距離を取りました。

 

パンチくんが座り込んだ直後、子ザルの母親と思われる大人のサルが素早く近づき、引きずるような行動を見せます。

 

この様子が「攻撃」「いじめ」と受け止められました。

 

しかし動物園は翌20日に公式見解を発表。

 

 

いじめではなく、群れ内の自然なコミュニケーションの一環」と説明しています。

 

ニホンザル社会では、子ザルに対して大人が叱る行動は珍しくありません。

 

特に母ザルは、自分の子どもに近づく他個体を強く制止することがあります。

 

パンチくんは人工飼育だったため、こうした“距離感”をこれから学んでいく段階。

 

動物園によれば、本気で命を奪うような攻撃ではなく、エサの時間帯にも特段の異変はなく、体調面の問題も確認されていません。

ニホンザル社会のヒエラルキー構造

ニホンザルの群れには明確なヒエラルキー(順位制度)が存在します。

 

上位個体ほど優先的にエサや場所を確保でき、下位個体はそれに従います。

 

この秩序は群れの安定を保つための仕組みです。

 

順位が曖昧になると争いが増え、かえって危険が高まります。

 

子ザルは成長過程で何度も叱られ、時には追い払われながらルールを覚えます。

 

これは社会的な「洗礼」に近いものです。

 

動物行動学では、こうした行動は資源配分や集団維持のための本能的反応とされています。

 

感情的な悪意とは異なる点が重要です。

 

また、サル社会には仲裁行動もあります。

 

上位個体が争いに介入し、エスカレートを防ぐケースも確認されています。

 

つまり、無秩序な暴力が続く構造ではありません。

人間のいじめと猿社会の決定的な違い

人間のいじめは、精神的苦痛を長期間与えることが大きな問題になります。

 

社会的孤立や継続的な排除が特徴です。

 

一方、ニホンザルの攻撃行動は秩序維持や子育ての延長線上にあります。

 

個体を徹底的に排除することが目的ではありません。

 

野生では、社会性を身につけられない子ザルの生存率は低いといわれています。

 

人工飼育で命を救われたパンチくんにとって、群れで学ぶ経験は不可欠です。

 

動画の一場面だけを見て判断しがちですが、動物の社会を人間の価値観だけで測るのは難しいところです。

パンチくんは今後どうなる?

パンチくんはぬいぐるみを抱えて過ごす姿で人気を集め、IKEAから33体の寄贈を受けるなど多くの支援が集まっています。

 

ハッシュタグ「#がんばれパンチ」も広がり、来園者数は増加傾向です。

 

動物園は「静かに見守ってほしい」と呼びかけています。

 

過度な声援や大声は、かえって群れにストレスを与える可能性があるためです。

 

今はまだ社会勉強の途中段階。

 

叱られながらも少しずつ立ち直り、群れの一員としての立場を築いていくはずです。

 

パンチくんがいじめられているように見える背景には、ニホンザル社会のヒエラルキーという厳しい現実があります。

 

しかしそれは、人間のいじめとは本質的に異なるものです。

 

動画の印象だけで判断せず、猿社会のルールを理解すること。

 

それが本当の意味でパンチくんを応援する姿勢なのかもしれません。

 

これからのパンチくんの成長を、温かく見守っていきたいですね。