沖縄の離島の宮古島で、ここ数年発達障害と診断される子どもが「8年で44倍増」になっているというショッキングなニュースが注目を集めています。
ニュースの見出しだけ読むと、『宮古島で何が起こってるの!?』と、つい心配になってしまいますよね。
ニュースの背景には、環境や医療体制、社会的な要因など、さまざまな視点が関係しているようです。
この記事では、宮古島で起きている発達障害児の急増の真相について掘り下げていきます。
また、「発達障害とはそもそも何か?」という基本的な視点にも触れていこうと思います。
目次
宮古島で発達障害児が急増?
近年、宮古島において「発達障害」と診断される子どもの数が急激に増えていることが報道されました。
2014年には6人だった特別支援学級在籍児童数が、2024年度には224人にまで増加したという事実。
この数字は、全国平均の増加率(約2.25倍)と比べても異常に高く、実に44倍という驚くべき伸びを示しています。
こうした急増の理由として考えられるのは、いくつかの複合的な要因があります。
1.環境要因
まず指摘されているのが環境要因です。
宮古島地下水研究会の調査によると、島の地下水や水道水からネオニコチノイド系農薬の複合汚染が確認されていて、これが子どもの発達に影響を与えている可能性があると一部の専門家は見ています。
ただし、現時点ではこの汚染と発達障害との直接的な因果関係は証明されていません。
環境汚染が発達障害のリスク要因の一つである可能性は、過去の研究でも示唆されていますが、宮古島に特化した信頼性の高いデータや検証はまだ不十分です。
2.診断体制の変化
次に考えられるのが診断体制の変化です。
近年、宮古島市内で発達障害の診断を行う医療機関が増えました。その結果、発達障害の“見える化”が進んだと言えます。
また全国的にも発達障害の診断基準が緩和され、以前は「個性」や「グレーゾーン」と見なされていた子どもが発達障害の診断を受けるケースが増えました。
その結果、統計上の数が増えたという可能性も否定できません。
3.移住者の影響
また、移住者の影響も一因として挙げられています。
都市部から『宮古島の自然の中で子育てしたい!』という家族が増えて、島の子どもたちの構成が変わってきている。
その中で、移住元の大都市での医療への意識(保護者や教育者の発達障害の認知が広がっている)や診断の傾向(軽度な特性を持つ子どもが積極的に診断される)が反映されている可能性もあるんじゃないかという話です。
発達障害と診断されるのはどんな子ども?
「発達障害」と聞くと、多くの人が「特別なこと」「重大な問題」と捉えがちですが、実際には多様な特性の一つとして位置づけられつつあります。
そもそも発達障害とは、生まれつきの脳の働きの違いによって、「コミュニケーションの取りにくさ」「こだわりが強い」「注意が散漫になりやすい」などの特徴が現れる状態を指します。
代表的な分類には、以下のようなものがあります。
・自閉スペクトラム症(ASD)
・注意欠如・多動症(ADHD)
・学習障害(LD)
これらは「病気」ではなく、本人が生活の中で「困りごと」を抱えている状態と考える方が自然です。
また、多くの人が何らかの傾向を持っているとも言われており、グラデーションのような概念だと捉えられています。
診断の基準も時代とともに変化してきました。
2013年、アメリカ精神医学会によってDSM-5という診断基準が導入され、これにより「より軽度でも診断されやすくなった」と指摘されています。
つまり、「発達障害」と診断されたからといって、それが「特別に重いこと」や「一生を左右するレッテル」になるわけではないのです。
診断より大切なのは“のびのび子育て”
子どもが「発達障害かもしれない」と言われたとき、多くの親は「どう育てればいいの?」「この子は将来大丈夫なの?」と不安になるのではないでしょうか?
しかし、こうした不安が強すぎると、子どもを“管理”しすぎてしまったり、失敗を恐れて挑戦させられなくなったりすることもあります。
一方で近年、「のびのびと子どもを育てること」そのものが、結果的に発達や社会性に良い影響を与えるという研究も注目されています。
具体的には
・子どもが安心して自分らしく過ごせることで、失敗を恐れず挑戦できるようになる
・強いストレスがかかりすぎないことで、脳や情緒の発達がスムーズになる
・得意なことを伸ばすことが自己肯定感につながり、結果的に苦手も克服しやすくなる
親自身が「完璧な育児」を目指さないことで、家族全体の空気が柔らかくなり、子どももリラックスしやすくなるでしょう。
人と比べたりしない方がいい。
診断や数字にとらわれすぎず、目の前の子どもと向き合うこと。
それが、子どもにとっても親にとっても、豊かな育ちにつながる大切な時間になるのではないでしょうか。
自然の中で子育てするという選択肢
宮古島の発達障害児急増というニュースに触れると、「じゃあ宮古島は子育てに向かない場所なの?」と思われるかもしれません。
けれども実際には、自然豊かで人が少ない環境こそが、子どもにとって穏やかな成長を促す場になるという意見も多くあります。
都市部では、過密な環境や過度な刺激、情報の多さなどが子どもを疲弊させ、本来のリズムを乱してしまうこともあるでしょう。
一方で、人間関係の密度が薄く、プレッシャーの少ない地域では、子どもも親も周囲の目を気にせず、マイペースな子育てがしやすいという利点があります。
医療や教育環境の整備など、離島ならではの課題もあります。
ですが、オンラインでの支援や情報へのアクセスがしやすくなった今、「自然の中で、ゆったりと育てる」という選択肢も、現実味を帯びていますよね。
子育てに行き詰まりを感じていたり、周囲との比較に疲れていたりするなら、「場所を変える」という視点を一度考えてみても良いかもしれません。
まとめ
宮古島での発達障害児が44倍の増加というニュースはセンセーショナルで、多くの人にとって衝撃的かもしれません。
しかし「発達障害」と診断されたからといって、それが「特別に重いこと」や「一生を左右するレッテル」になるわけではないのです。
実際、発達障害と診断された多くの子どもたちが特性に合った支援や環境の中で、のびのびと成長し、自分らしい道を歩んでいます。
むしろ大切なのは、「何の診断がつくか」よりも、どんなサポートがあれば子どもが過ごしやすくなるかという視点です。
不安を感じたときこそ、冷静に「子どもが困っていることは何か?」「何が得意なのか?」を見つめ直してみることが、より健やかな関係づくりの一歩になるかもしれません。